自身の世界観を突き詰めた音楽活動を行なっていた悠木 碧があらたな活動スタイルをスタートさせる。『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』のオープニング主題歌「永遠ラビリンス」と、作品を別のアプローチから表現したカップリング曲「ハツジョウジカケラブゲーム」からはどちらも彼女の新しい表現が聴こえてきた。そ...
自身の世界観を突き詰めた音楽活動を行なっていた悠木 碧があらたな活動スタイルをスタートさせる。『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』のオープニング主題歌「永遠ラビリンス」と、作品を別のアプローチから表現したカップリング曲「ハツジョウジカケラブゲーム」からはどちらも彼女の新しい表現が聴こえてきた。そこに至るまでにはどんな思いがあったのだろうか。現在の彼女をたっぷりと語ってもらった。
ここから先はみんなにありがとうのパーティーをしていけたら
――悠木さんが新たな音楽活動をされることを発表した際、ティザーサイトに「今までは私の空想世界の表現をめざしていましたが、これからはみんなと感情を共有できるような、そんな歌をうたっていけたらいいなと思います!」という発言が掲載されていました。よくある形としては、デビューのときは表現の幅を広く取って、そこからだんだんと自分の世界を突き詰めていくというケースがありますが、悠木さんはその逆のパターンを行っているように思えました。これはどんな思いからだったのでしょうか?
悠木 碧 最初に音楽活動をするときに考えていたのは、私は音楽アーティストの方よりもスゴいことができるわけでもないので、声優である私が歌う理由を生み出すくらいの表現をしなければいけないということでした。そうなったときに、私の内面とか私が持っている世界観や好きなものを表現したら、そこを好きだと言ってくれる人が出てくるかもしれないなと。ソロ活動をしていくにしたがって、それを突き詰めて自分としてのMAX値を出せたなと思ったのが3rdミニアルバムの『トコワカノクニ』だったんです。例えば、言葉に込める表情やスピード感は声優の方が向いていると思うので、そういうふうに自分が歌う意味を見つけていって自信をつけてもらいました。内側にあったものを今度は外向きに表現して、いろんな人といろんなことを共有していけたら、楽しいと思ってくれるコンテンツを生み出しているんじゃないかなと思ったというのが、今から外向きになろうと思った理由です。
――自信をつけることができたのは、その内面を表現したものを受け止めてくれたファンのお陰と。
悠木 そうですね。そこにわざわざ入り込んできてくれて、それを一緒に面白いねと言ってくれたお客さん達には感謝の気持ちでいっぱいです。ここから先はみんなにありがとうのパーティーをしていけたらいいなと思っています。petit miladyでの活動や『戦姫絶唱シンフォギア』のライブイベントなどで歌わせていただく機会も数多くいただいて、それらを通じて内面の部分だけでなくてもいいのだと認められたなと思える部分もあって、少し自信もついたし、何よりも皆さんが温かく待ってくれていることも分かったので、これからはそれに応えていけたらと。自問自答するよりも、人と喋って交流した方が絶対いろんな発見があると思うんです。だからさらに進化させるために新しいものを摂り込みたくて今回「永遠ラビリンス」からリスタートさせていただくことになりました。
――お話をうかがうと意識的に自分を変えていこうと思われたようですが、それには長い時間をかけられましたか?
悠木 そうですね……、2015年にソロ・コンサートをやらせていただいていたときからじわじわ考えていて、私が今できる最高値がもしかして見えてきたかもな……とは思っていたんです。そのなかで2016年の末に『トコワカノクニ』が生まれて、究極のものができたなと思ったので。私の中ではすごく自然なことだったように思えるのですが、きっとお客さんからしたらすごく急なことに感じられたのだと思います。ただ、その思いは先輩とか友達とかスタッフさんとかいろんな人に相談をして「思ったときにやるほうがアーティストっぽいよ」と言われて、たしかにそうだなと思いました。これからいろんなコラボレーションや作品タイアップ曲を通じ、自分の色ではないものを採り込みながら自分の色を出していくことが必要になるので、自分が何をしたいか、何がステキだと思うかが明確になります。その点で、今までの活動ができていたからこそ出せるものだと思うんです。
――ちょうど今、お話に出ました作品タイアップですが、再スタートが作品の『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』の主題歌に決まったときはどのように思いましたか?
悠木 前提として、私が満足するというより、みんなで満足するものを作ってもらうというものがあったので、「永遠ラビリンス」は作品重視で、監督さんの意向をすごく汲みたいなと思っていました。よくタイアップのときに言うんですけれども、“縛りプレイ”でいかに自分の味や表情が出せるかみたいなところが腕の見せ所かなと。オープニングで流れるということで、楽曲がほとんど決まっている状態で「この中でいかに私の表情を出して遊んで行けるか」というアプローチの仕方になりました。1から作るのも楽しいんですけれども、提示されたものの中で遊ぶというのは声優自体得意分野なんです。普段からして台本やキャラクターが決まっているわけですから、その意味で本領発揮というか、そこに120%を割けるという意味でとても楽しかったです。
――今回のボーカルは悠木さんが新しいことをやろうとしているんだなと感じられました。『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』のキャラクターのいろんなところが代弁されているかのように。
悠木 基本的にギャグなんですよね(笑)。私自身も、いわゆるハーレムに見せかけてギャグというこの作品の遊び心がすごく好きなので「永遠ラビリンス」のなかでもそういう作品の拾い方をしていて。すごく爽やかな歌として聴かせておいて、実は歌詞でめちゃくちゃ遊んでるみたいな感じを出せていけたらいいなと思いました。
――今の考えにたどり着くまでに時間はかかりましたか?
悠木 10月新番組の主題歌ということで、すごくショートスパンでした。でも最初に時間的なピンチを体験したことはすごく良かったと思います。スタッフの皆さんが本当にプロとして自分の仕事以上のことを遂行してくださるのを見て、私はこの曲を歌いその良さを皆さんに伝えることに絞ることが自分の仕事だと思いましたし、 みんなの見えているところが明確なので、私も見えるところが明確でした。短期間でしたけれどもやりたいことがすごく詰め込めたなと思います。
「『しょびっち』大好き」と言ってくれる人とは友だちになれる
――『しょびっち』の作品の印象はいかがでしたか?
悠木 「ボケ散らかしている」作品というのは多いんですけれども、この作品はすごく「ボケ整っている」んですよ。こう転んだら、次はこうくるよねというのが全編すごくきれいに並んでいるんです。いわゆる、ちょっとHなワードによって微妙に散らかしてあるみたいな感じがすごく面白くて(笑)。ギャグ作品は大好きで見るのも演じるのも大好きなんですけれども、こんなにもボケが整っていたのは初めてです。
――別のギャグ作品でもヒロインを演じられていましたが、ギャグというのは深いですね。
悠木 ちょっと前に別の作品をやっていたからこそ、ギャグだけれども違うギャグだということを感じられたんだと思います。どっちもパンツが見えてしまう作品なんですけれども、パンツが見えてもまったくいやらしくない(笑)。私はこのテンションが好きなのですごく楽しくやらせていただいます。皆さんが思われているより大好きですから(笑)。私、「『しょびっち』大好き」と言ってくれる人とは友だちになれると思うんですよ。
――カップリングの「ハツジョウジカケラブゲーム」。これまた刺激的に聞こえるタイトルですが。
悠木 これが刺激的に見える人は心が汚れていると思います(笑)。
――きちんと歌詞カードを読めばその意図が分かるんですよね。
悠木 そう(笑)。字だけ見ると「んん??」となるんです。「永遠ラビリンス」は正統派のオープニングで、こちらの曲は私たちが考える『しょびっち』のオープニングがこんな感じだったらいいなというテーマで作らせていただきました。ワチャワチャしていておもちゃ箱みたいな感じで、聴きようによっては心の汚れた人にはセクシーに聞こえる内容?(笑)。メロディアスな部分があったりいろんな表情を歌詞に出せたり、すごくいい曲になったなと思っていて。こっちの方が私の好みが反映されていると思います。
――どんなところがお気に入りですか?
悠木 ドキドキさせる言葉の後に、もうひとつ来て「あっ、僕の勘違いでした」とさせるリズムが本当にいいんですよ。聴いているだけでハラハラしちゃうというか、私もいろんな表情で歌っていますけれども、聴いているお客さん達もいろんな表情をしてくれるんじゃないかと思います。聴き終わって、よくわからないけれども恥ずかしくなって、赤面していただきたいですね(笑)。
――歌の中にも芝居を入れていますよね。
悠木 それがこれまでのソロで学ばせていただいたことかなと思っていて、声優が歌う意味に近いかなと思っています。 一行ごとにいろんな表情を出してバンバンいろんなキャラクターを出していく。われわれ“縛りプレイ”に慣れた人間じゃないとできないことだと思うので、それをどんどん活かしていけたらと思っていましたし、それをこの曲で引き出していただき、ここぞとばかりに発揮して歌わせていただきました。
――その芝居の原形はどのように作られるのでしょうか?
悠木 基本的には歌詞に導かれるままに、あとはロートーンから入って流れがきれいになったほうがいいところもあれば、ハイトーンでぴょんぴょん跳ねた方がかわいいところもあります。突然ハイトーンからロートーンに下がるみたいなジェットコースター感が出るといいかなとか。聴いていて楽しいキャラクターのハメ方をいちばん重要にしたかったんです。セリフでも「立てどころ」という考え方があって、それは歌詞も同じだと思うんです。どこを立ててあげるかによって全然意味が変わってくるんですよ。そこの立てるところでキャラクターをガツンと変えると、みなさんに聴いてほしい歌詞が入ると思うんです。
――この曲で作詞・作曲・編曲を担当されているOSTER projectさんとはお話されましたか?
悠木 はい。レコーディングにいらしてくださって、「かわいらしくてすごく好きです」と言ったら「そういうの大好きです」と言ってくださって。本当に絶妙な歌詞ですよね。ギリギリ下品、みたいな(笑)。 でも音の配置とかがすごくかわいくて、これは全部同じ方がやったからこそだなと思います。曲の聴かせたいところと歌詞の聴かせたいところのバランスがすごく良くて、そのハラハラ感が出ていると思うんです。OSTERさんからも「あまりこういう作品をやることがないんですけど、本当好きなのですごくうれしかったです」と言っていただけました。先程の「『しょびっち』が好きな人とは仲良くなれる」精神で、「この人ともいい酒が呑める」なと思いました(笑)。
――OSTERさんにもそういう部分があったんですね。
悠木 そうなんです。正統に美しい曲やかっこいい曲を作られる方なんですけど、天才は何をやっても天才なんだなーって思いました。この言葉って、そういうふうに聴こえなくもないねみたいなギリギリを突いてくる感じが、「ボキャブラリーハンパないな」と。
――歌う側としてはどんなことを意識されましたか?
悠木 ボーカルが入ることによってよりギャグテイストが増したかなと思っています。音になると思っていた以上にカラッとした感じになって、歌詞も最終的に自分の妄想で発展していないというオチがついているので、そういうところを120%出すように歌いました。
――新しい音楽活動への今後の展望はいかがでしょうか?
悠木 まずは皆さんと感情を共有するということを言ったので、表で時間と空間を共有する場やイベントだったりをやっていけたらと思います。あとはいろんな感性を持つ人とのコラボレーションをしてみたいなと思っています。もちろん、聴いていただく皆さんが私に何を求めていらっしゃるのかも捉えつつ、ですね。
――ブログやtwitterも始められて、チャンネルも開いていますしね。
悠木 そうですね(笑)。イベントとかに来て下さるコアなファンの方たちは、私がどんな人間かご存知かと思うのですが、今回改めて気づいたのが、私の名前の字面が思った以上に清純なイメージで見られているようなんです。「悠木 碧って、白いスカートを履いてふわふわしている子でしょ?」と(笑)。だからまず私がどんな人か知っていただくということも重要かなと。それを知ってもらううえでも、与えていただけた機会を長続きさせて、ていねいに頑張っていけたらいいなと思います。これは歌とは直接関係ないかもしれませんけれども、私は30歳になったら和装に替えたいと思っているので、そういうものとテイストが絡むきっかけがあったらいいなと勝手に想像しています。
――ご自身としてはそこまでの時間を長いと感じていますか?
悠木 30歳からが役者人生本領かなと思っているので、「あと5年頑張るぞ!」と思っています(笑)。そこまで全力で下積みをさせていただいて、それを皆さんに認めていただけるようにまっすぐ頑張らなきゃなと思っています。
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