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事件や芸能界のスキャンダルなど世間が注目する話題を取り上げる「トレンドブログ」が、事実無根の「フェイクニュース」の温床となっている。神奈川県座間市の9遺体事件で、容疑者の親族が事件に共謀したかのような事実無根のうわさや臆測を投稿し、サイト内の広告で収益を上げるブログが多数ある。その一つの管理人が私の取材にメールのやり取りで応じ、11月20日朝刊「ネットウオッチ」で詳報した。

広告収入「多い月10万円台後半」も

 管理人は<副業として始めた。広告収入は多い月に10万円台後半>とし、動機については<収益目的と世間のニュースやその裏を追いたい気持ち>と説明した。しかし、記事が出たあとブログ更新はストップ。まもなく私は管理人からのメールで、その後の経緯を知ることになった。

 そもそも私がトレンドブログに興味を持つきっかけは座間市の事件だった。ネット上で容疑者名などで検索すると「容疑者の学歴は?」「家族の関与は?」などの見出しを掲げるブログが多数出てくる。ニュースサイト風で事件以外の話題も載せるが、大半の投稿内容はでたらめで独自取材の形跡はない。人権侵害の恐れが濃厚な投稿も多い。

 どうしてこんなブログをやっているのか。過激な見出しを掲げる15のブログを選んで管理人に問い合わせのメールを送り、1人が前述のように証言した。自身を<近畿地方の30代男性>とする管理人は<報じられていない情報をいち早く記事にできた時はうれしい。しかし、他人に『こういうブログをやっている』と胸を張って言えないことは確かです>と後ろめたさを打ち明けた。それでも<収益目的もあるし、何より事件や芸能の裏を追うのは楽しい>としてブログを続けると表明していた。

 だが、更新は止まった。その理由をメールで問い合わせると、相手は経緯を書き送ってきた。それによると、私の記事が出た直後に「お前のブログを(広告配信元に)通報した」と匿名の閲覧者から連絡があり、まもなく広告が消え収入が途絶えたという。

 管理人は<投稿が違反だとは分かっていた。あのような記事を書くことに誇りはなかったし、非常にリスキーだった。ありがとうとは言えないが、いいきっかけになったので感謝している>などと反省をつづっていた。

 しかし、今もネットにはおびただしい数の悪質なトレンドブログがあふれかえり、殺人事件などが起きると「(容疑者の)顔写真が判明」「出身校は?」などネット上であさった根拠に乏しい情報を垂れ流している。

虚偽情報転載で人権侵害を拡大

 私の取材に回答を寄せたトレンドブログの管理人たちは、投稿による人権侵害の可能性を指摘すると「ネット上にあった意見をまとめただけなので責任は問われない」と反論した。だが、ネット上の名誉毀損(きそん)問題に詳しい唐沢貴洋弁護士は「(事実無根の情報を)転載したことで新たな読者を獲得し、権利の侵害を拡大しており、法的責任を問われる」と指摘する。

 実際、ネット上の差別的な書き込みで名誉を傷つけられたとして在日朝鮮人の女性がサイト運営者に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は先月、200万円の賠償を命じた。運営者は「他のサイトの投稿を引用し、わかりやすくまとめたもの」と主張していた。

 そもそも、容疑者や親族などのプライバシーを探り、糾弾しようとする一部ネット利用者の行動は、常軌を逸している。「関東圏の40代」という別の管理人は「問題提起、真相究明、事件解決を望む正義感の強い人が多いからブログが乱立する」と話す。正義感を「飯の種」にし、ほくそ笑む管理人がいることを私たちは肝に銘じるべきだろう。

 唐沢弁護士は「権利侵害が多数報告されたサイトについては、グーグルなどの検索サイトでもひっかかってこないようにするといった対策も必要だ」と話す。

 国内9割以上のシェアを占めるグーグルは、詳細を明かさないが「フェイクニュース」対策を進めているとしている。企業の検索エンジン対策を請け負う辻正浩さん(43)は変化を実感している。例えば、数十人の芸能人の名前をそれぞれ検索し、一定期間ごとの結果を調べると、今年に入り、新聞や雑誌など大手メディアの情報が目立つ位置に置かれる傾向が顕著という。だが、芸能人の名前に「本名」と加えて検索すると、目立つ位置に怪しい情報が出てくる。ネット上で探したとみられる卒業アルバムの写真に基づく本名、芸能人の交際相手などに関するうわさ、真偽の不明な「実家の住所」……。

 とはいえ、検索結果から悪質なブログを除外するために規制を強めると、良質のブログまで排除される可能性があり、悩ましい。グーグル側もウェブはオープンであるべきだとしている。検閲が許されない以上、ユーザーのモラルやリテラシーに頼るしかない。

 ネット上をフェイクニュースが席巻する時代。送り手も受け手も、虚偽情報が瞬時に拡散するリスクを踏まえ、ネットに向き合う必要がある。

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出典:公式総合情報データベースサイト「coron」 執筆者 : .

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