2017年4月に突如登場し、インターネット関連技術者の間で話題の中心に上った「マストドン(Mastodon)」。一見しただけだとTwitter(ツイッター)とほとんど変わらないが、ツイッターにはない機能や特徴が新しい物好きのネットユーザーに受け入れられ、瞬く間にユーザー数は全世界で50万人を超えた。...
2017年4月に突如登場し、インターネット関連技術者の間で話題の中心に上った「マストドン(Mastodon)」。一見しただけだとTwitter(ツイッター)とほとんど変わらないが、ツイッターにはない機能や特徴が新しい物好きのネットユーザーに受け入れられ、瞬く間にユーザー数は全世界で50万人を超えた。その注目度の高さから「ポストツイッター」と呼ぶ声もある。
数あるSNS(交流サイト)のなかで、なぜマストドンの人気が急上昇したのか。アプリを開発したオイゲン・ロッコ(Eugen Rochko)氏に電子メールで連絡を取り、開発の経緯や狙いを聞いた。
マストドンを開発したオイゲン・ロッコ(Eugen Rochko)氏。24歳。マストドンを開発する前は、独フリードリヒ・シラー大学イェーナの学生だった
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マストドンを開発したオイゲン・ロッコ(Eugen Rochko)氏。24歳。マストドンを開発する前は、独フリードリヒ・シラー大学イェーナの学生だった
■「ツイッターの方向性が気に入らない」
マストドンは、1回に投稿できる文字数が500文字(ツイッターは140文字)で、投稿をツイートではなく「トゥート」と呼ぶ。ツイッターとの見かけ上の違いはこれぐらい。ツイッターと同様に、ほかのユーザーの投稿を随時見られるよう「フォロー」したり、相手が投稿を見られないように「ブロック」したりできるのはマストドンも同じだ。
だが単なるツイッターのクローンだけでは、これほど話題になることはない。マストドンがツイッターと根本的に異なっているのは、複数のマストドンのサーバー(マストドンでは「インスタンス」と呼ぶ)が「連合」を形成する点だ。小規模なインスタンスが連合を形成することによって、全体でそれなりの数の利用者同士がコミュニケーションできる環境を作り出している。
マストドンを開発したロッコ氏は「ここ数年のツイッターの方向性が気に入らなかった。そこで、ツイッターのようにはならない仕組みを取り入れたシステムを開発しようと考えた」という。その仕組みがオープンソース化であり、連合という仕組みだ。
ロッコ氏が特に気に入らなかったのは、ツイッターが広告を表示するなど、ユーザー情報を切り売りしていると感じられる点だ。そのため同氏はインターネットを通じて小口資金を集めるクラウドファンディングの「Patreon」で資金を募りマストドンを開発。おかげで「広告の導入やユーザー情報の販売といったことをせずに、自由に開発できた」という。
マストドンの連合の仕組みは非常に「インターネット的」だ。インターネットは1つの「インターネット」というネットワークが存在するわけではない。複数のローカルネットワークが互いにつながりあって連合してつながっている。誰も全体を中央集権的に管理していないのに、ゆるくつながってうまく動作する仕組みになっている。
マストドンにおける「連合」も同様だ。ロッコ氏によると「初期状態では、インスタンス間で投稿を交換しない。マストドンには『リモートフォロー』という仕組みがあって、別のインスタンスに所属するユーザーの投稿をフォローできる。インスタンス1に属する「ユーザーA」が、インスタンス2に属する「ユーザーB」をフォローすると、インスタンス1はユーザーBの投稿を保存するようになる。逆にユーザーBがユーザーAをフォローすると、今度はユーザーAの投稿がインスタンス2に格納されるようになる」。これを多数のユーザーが実行すると、各インスタンスにほかのインスタンスの情報がたまっていく。
■インターネット的な仕組みでつながる
このような構成を採用する最大のメリットは、システム全体としての安定性だ。インターネットのどこかの中継線が途切れても、どこかしらの経路をたどって目的の通信相手にたどり着けるように、マストドンでは1つのインスタンスが動作しなくなっても、連合を形成しているほかのインスタンスに保持された投稿を参照できる。
マストドンのタイムラインの例。一見しただけだとツイッターとほとんど変わらない
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マストドンのタイムラインの例。一見しただけだとツイッターとほとんど変わらない
こうした特性を生かし、ツイッターのように情報を発信したい利用者が気軽にインスタンスを公開するというのがマストドンの主な使い方だ。比較的小規模なインスタンスを作成し、小規模な同好の士が集う場所を作る。それが多数点在し、知り合った別インスタンスのユーザーをきっかけにしてコミュニケーションが広がっていく、というのが本来の姿といえるだろう。実際、ロッコ氏も「私の知る限りでは、割と顔なじみのような小規模の趣味向けインスタンスが多い」と語っている。
ただし懸念もある。ツイッターのように中央集権型のシステムと違って情報の管理が難しい。第1が悪意あるユーザーが規約などを無視して不適切な投稿を連発して、そのインスタンスの品位を落とすような攻撃。個人が管理するインスタンスでは、こうした問題に対処するのは難しいだろう。もう一つが情報の管理だ。自分が投稿したトゥートを削除しても、ほかのインスタンスに伝わった情報が削除されるかどうかは保証の限りではない。各インスタンスの実装に依存するが、削除されないインスタンスが多いようだ。
その出自から、初期のインターネットの雰囲気が感じられるマストドン。今後ユーザー数が伸びてツイッターに拮抗するかどうかは未知数だが、インターネットらしい技術として今後に注目したい。
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